昨日は現実とは言えない悪夢を見たような気がする。果たしてそれが現実だったかどうかは、時が過ぎてしまえば、記憶とデジタルデータしかないので、最早それが現実だったという証拠も無い。今はそういう時代だ。 何時ものように朝目覚めると、少し頭が重いが昨日の悪夢のせいだろうか。 いや花粉かもれない、室内に溢れんばかりの陽が注ぎ、いつもより青い空が覗いている。こんな日は家にいるなんて考えられない。深い青がかつて見たことの無い風景に出会える可能性を示唆する。速攻着替えて、出発だ、高速も一般道も空いてるであろうから、こんな旅の相棒はR8にした。
家の周りは車の量は半分くらいで軽快に進む。高速に入るとぐっと減って3割くらいだろうか、時間は11時、幌を占めて走る。通常この位であれば大渋滞が待っているが、走れど車の姿はまばらだ、途中いくつかのトンネルではソフトトップを閉じた状態でリヤウインドウを開ければV10自然吸気エンジンのサウンドが楽しめる。昨今の加給エンジンでは味わえない音色、本当に素晴らしい。この車にはオーディオは要らない。エンジンの音が楽器となって、思うがままのアクセルコントロールに応じた最高のサウンドが楽しめる。フラットな乗り心地とダウンフォースの効いた車体は、なんだか、実測の半分くらいしか速度感がないので、注意が必要だ。
行き先はどうしよう。とりあえず旨い蕎麦を食べに行くかという不要な目的で出たが、こう天気がよくて道が空いてると、欲が出る。 そうだぐるっと一周ワインディング三昧にしよう! コースが決まれば気も楽だ。ともすればインターに到着、いつもより早い。下道に降りていつものお気に入りの道からスタートすると、途中いくつかの宿場町を抜ける。人気のないこの道も江戸時代は沢山の人が通っていたかと思うと感慨深いものがある。少しすると、見晴らし展望台だ。ここから見る富士山は控えめで大好きだ、いつも人が居ないのも良い。
バイクで通る時もそうだが、ここは休憩ポイントで缶コーヒーを漏れなくここで飲むのが楽しみだが、お昼も近いので、我慢する。 それにしても富士山が美しい。 いつもより白く輝いてる。 なんだか今日は人が多い、近所の人もこの富士山を見に来てるようだ。綺麗だねー来てよかったねーなんていう地元の人との会話も楽しんだ後、誰も居なくなったので超小型ドローンを取り出す。
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なんだか戻ってきた。ドローンも車も珍しいらしい。ここではコロナの話は無い。ドローンから送られてくる画像は車の殆ど走っていない高速とサービスエリアだ、いつもは数珠つなぎのこの道も閑散としている。平和だ。 小腹も空いたので先を急ごう。途中気になる小山がある。昔富士山信仰で出来た山だろうか、そこに素晴らしい桜も咲いていた。 本当に桜は素晴らしい。
昔から人は高いところが好きなのだ。 そして桜も好きだ。
まだまだ桜が観れる。小山に登ると小さな花が咲いていた。お蕎麦やさんに急ごう、大好きな蕎麦屋さんだ、蕎麦は普通だけど、何と言っても甘いつゆが最高に美味しく、天ぷらと合わせた時には、どんなに美味しいと言われる10割蕎麦より美味しい。ざる蕎麦で支配的なのは、つゆということが実感できる。今や贅沢品だけど蕎麦なんて米よりも庶民食で実はそれほど美味しいものでは無い。
誰もいないがここは何時も通りだ、ほっとする。クセになる天ぷら蕎麦を食べて、橋を渡る、ここに来たら日本三大奇矯の猿橋を渡らないという事はない、珍しい橋だが人気がなくサイクリストが居るくらいだ。下を見ると渓谷が見える。なぜこんな所に橋を作ったのかは謎だが、どうやら戦国時代の戦略的な橋だったようだ。
先を急ごう。ここからは渓流沿いを走る本格的なワインディングだ、トップを開けて走る事にする。開けると同時に、エキゾーストをスポーツモードにして、ドライブセレクトをダイナミックにすると、車は本来の性能を発揮してコーナを舐めるように通過していく。後ろから聞こえるエキゾーストは痛快な雄叫びをあげて、人気のない山にこだまする。最高の瞬間だ。 さらに上を見ると宇宙まで見えそうな空が迫り、冷たい風が五感を刺激する。バイクも負けてはいないが、全ての五感を刺激して走ることができるのはオープンカーの特権だと思う。
途中休憩して、遠く山桜や新緑を楽しみながら先を急ぐ、まだまだ序盤だ。 さら税金も無駄使いのような誰も通らない長いトンネルを抜けると、遠くの山に雪が見える。首都圏は暖かいというのに、まだ雪があるのか?数百のコーナーを抜けて峠を越えていく。 標高1000mは超えただろうか、傍に雪が残っている。遠くの山も雪景色だ。途中景色を見るために止まる、山間に聞こえる鶯の鳴き声と新緑、いつもと変わらない景色。いや、いつもより美しい景色。雄しべと雌しべと虫の関係に思いを寄らす。日本は緊急事態宣言なのだが、ここに居ると何が緊急事態かわからない。本来ならば、家で踊るか、家で動物を抱いて寛ぐか、家で歌を歌うべきなんだろうけど。申し訳ない。
まだまだ先が長い、コースの半分も消化していない。時計を見るとまだ1時ちょっとだ、陽も真上だ。不謹慎かもしれないが、なんだかにやけてくる、何故ならまだまだお腹いっぱいにドライブが楽しめるのだから。続